大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所那覇支部 平成7年(行ク)3号 決定 1997年1月27日

那覇市首里大中町一丁目四一番二号

当審における追加的併合訴訟原告(以下「原告」という。)

山岸洋一

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

当審における追加的併合訴訟被告(以下「被告」という。)

右代表者法務大臣

松浦功

右指定代理人

原田勝治

林田雅隆

玉栄朋樹

郷間弘司

荒川政明

松田昌

古謝泰宏

主文

本件を那覇地方裁判所に移送する。

理由

一  記録によって認められる本件訴えに至る経緯は次のとおりである。

1  原告は、平成六年度市民税六一万七七〇〇円及び同年度県民税二〇万七七〇〇円をそれぞれ課され(以下この課税を「本件課税」という。)これを納税したが、本件課税は、原告が平成五年内に納付した所得税一七二万八九〇〇円、市民税及び県民税三二五万七六〇〇円並びに固定資産税一二万一六五〇円を原告の総所得金額から所得控除することなく行われた条理に反する重複課税であり、右重複課税による不当利得の返還を求めるとして、平成八年二月一九日、那覇市に対し三六万九一一〇円の支払を、沖縄県に対し一三万四一二〇円の支払をそれぞれ求める訴訟(那覇地方裁判所平成八年(行ウ)第三号)を那覇地方裁判所に提起した。

2  那覇地方裁判所は、本件課税は地方税法及び那覇市条例に基づいて行われ、条理に反するものではないとして、請求棄却した。原告は、那覇市に対する請求についてのみ当裁判所に控訴(当庁平成八年(行ウ)第五号)したが、当審において、右訴訟に追加的に併合して国を被告とする後記3の請求訴訟(本件訴訟)を提起し、那覇市に対する訴えを取り下げ、那覇市はこれに同意した。

3  本件訴訟に係る請求に要旨は次のとおりである。

(一)  請求の趣旨

(1) 被告は、原告に対し、一四五万五三三〇円を支払え。

(2) 住民税所得割を近似固定額とし当年徴収制度に改めるのを妥当とする。

(3) 固定資産税及び相続税の時価評価制度廃止を妥当とする。

(4) 被告は可及的に速やかに法制審判所を設け法制審判訴訟法を制定せよ。

(二)  各請求の理由の要旨

(1) 原告は、地方税法等の所得控除目に所得税等を含めなかった大蔵大臣の過失により、平成五年分所得税、平成六年度市・県民税に関し、一四五万五三三〇円の損害を被った。

(2) 住民税の特別徴収のうち次年度徴収制度には所得の少ない又は全くない住民に対してその所得を上回る所得税を課税する不条理が認められる。

(3) 固定資産税及び相続税の税額計算において不動産の評価額は時価によるものとされているが、これによると、不動産の所在地及び課税年月日の相違により国民間の税負担に著しい不公平が認められる。

(4) 我が国には法律の誤りを訴える法律がなく、また、税法の誤りを主張して提起する訴えの費用は無料とすべきである。

二  原告の那覇市に対する訴訟は行訴法上の当事者訴訟(行訴法四条後段)であるところ、当事者訴訟に行訴法二一条の国に対する請求への訴えの変更を認める規定が準用されておらず(行訴法四一条)、また、民訴法上本件のような形での控訴審における訴えの主観的追加的併合が許されない以上、当審において那覇市に対する前記当事者訴訟に併合して提起した本件訴えは、行訴法四一条二項の準用する同法一九条一項による追加的併合に係る訴えと解するのが相当である。そうすると、本件訴えが右併合要件を満たすためには被告の同意が必要であるところ(行訴法四一条二項、一九条一項、一六条二項)、被告はこれに同意しないのであるから、本件訴えに係る請求が那覇市に対する前記請求に対し関連請求に該当するか否かについて検討するまでもなく、当審において本件訴えを那覇市に対する訴えに追加して併合提起することが許されないことは明らかである。

しかしながら、本件追加的併合の訴えは、その後原告が那覇市に対する訴えを取り下げたことからも明らかなように、前者の請求の併合が後者の請求と同一の訴訟手続内で審判されることを前提として専らかかる併合審判を受けることを目的としてされたものとは認められないから、直ちに本件追加的併合の訴えを不適法として却下することなく、本件を管轄裁判所である那覇地方裁判所に移送するのが相当である。

三  よって、行訴法七条、民訴法三〇条一項に従い、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩谷憲一 裁判官 角隆博 裁判官 伊名波宏仁)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例